クルマのカスタマイズにおけるファーストステップといえるのがホイール交換。ホイール選びひとつで、クルマの雰囲気をガラリと変えることができるのは、ご存知の通り。ここでは、ホイール選びに必要な基礎知識について解説していこう。

1. 素材[MATERIAL]

アフター製品の大半はアルミだ!

ホイールに使用される素材はスチール、アルミ合金、マグネシウムの3種類が一般的。アフターパーツはほとんどがアルミ製で、非常に高価なマグネシウム製はレース用高級スペシャル品がメイン。スチール製は商用車などの純正ホイールとして現在も採用されているが、社外品にはほとんど例がない。

2. 製法[MANUFACTURING]


鍛造(たんぞう)と鋳造(ちゅうぞう)の違い

鋳造:型に溶かしたアルミを流し込んでいる様子
金型鍛造:アルミの塊を油圧プレス機でプレスし成形している様子
削り出し鍛造:鍛造されたアルミブロックからマシニング加工によりホイールを削り出す様子

溶かした金属を型に流し込んで作られる『鋳造』と、合金の塊に高圧力をかけて製造する『金型鍛造』の2種類が基本。一般的に鍛造といえばこの金型鍛造を指し、コストや量産性では鋳造に劣るものの、優れた強度や剛性を叶えつつ軽さも実現できる。そのためハイスペックモデルの代名詞といえるのがこの鍛造ホイールだ。加えて、近年は鍛造されたアルミの塊からホイールを削り出す『削り出し鍛造』も増えており、金型に囚われない自由な造形とサイズ展開から海外を中心に市場を拡大している。

3. 構造[STRUCTURE]

1ピースだけじゃないホイールの構造

一体成型の1ピースモデルは継ぎ目がないので強度が高く。スポーツホイール向けの剛性も確保できる。一方、ディスクとリムが分割構造になっている2ピースや3ピースモデルはオフセットが細かく設定できるメリットがあるため、ドレスアップ目的であればこちらがターゲットとなる。ただし、ピアスボルトなど部品点数は増えるため、軽さでは1ピースモデルに大きなメリットがある。

4. 形状[DESIGN]

3つの基本的なホイールデザインとは

求める方向性に合わせて、基本的なディスクのデザインは決まってくる。ハブセンターからリムエンドまでスラッとスポークが伸びる『スポーク』タイプは、軽さやブレーキ冷却性など機能性も高いのでスポーツカーやチューニングカー向き。細いスポークが絡み合うようなデザインの『メッシュ』は、スポーティーさと高級感を演出したい時に最適な仕様。ホイール表面が覆われたような『ディッシュ』デザインは、ラグジュアリー感を放つデザインで、今も昔も変わらないVIP系マシンの定番といえる。

5. P.C.D[Pitch Circle Diameter]

車種によって異なるボルトホールピッチ径

P.C.Dとはピッチ・サイクル・ダイアメーターの略で、ボルトホールピッチの直径を指す。国産車では100や114.3が多いが、4穴や5穴などいくつかのバリエーションがある。これがマッチしないと車両への装着は不可能なので注意が必要だ。

6. 基本的なホイールの表記について【How to read Wheel spec.】

カタログスペックから具体的なサイズを読み取れ!

ホイールメーカーのウェブサイトやカタログページでは、画像のようにホイールサイズが表記されることがほとんど。どの数値が外径・幅・インセット・P.C.Dを示しているのかが分かれば、自ずと理想的なホイール選びができるはず。

6_1. ホイール選びの基本要素その1【外径】

タイヤを含めた外径に注目せよ!

文字通りホイールの外径を表す数値。実際には組み合わせるタイヤの外径によって、車両への装着難易度が変わってくる。例えば、画像は205/55-16(標準直径632mm)と215/35-19(標準直径633mm)。ホイール外径に3インチもの差があるが、タイヤ外径がほぼ同じなのでそのまま装着できてしまう。

むしろホイール径が変わらなくても、タイヤサイズが変わって外径やトレッド幅が変わるとフェンダー内に干渉したりメーターが狂ったりと弊害がおこるので注意が必要だ。

6_2. ホイール選びの基本要素その2【リム幅】

数字が大きくなればホイールは太くなる

ホイール選びで最も重要となるのが、ホイールの太さをインチで表したのがリム幅。基本的には0.5インチ刻みで表記される。「18×8.5J+35」というホイールサイズがあった場合、8.5Jの部分だ。リム幅を広いものにして太いタイヤを履かせればグリップ力向上を狙えるが、やみくもに太くしていくとフェンダーなどに干渉するようになるので注意が必要となる。

6_3. ホイール選びの基本要素その3【インセット】

「マイナス=外側」と覚えるべし!

リム幅と並んでホイール選びで重要なのが、インセット(オフセットとも呼ぶ)。これは、仮にインセット50というホイールがあるとすれば、それはハブ取り付け面がリム幅の中心線からアウター側に50mmズレているということ。数値が少なくなればハブ取りつけ面がリムの中心線に近づく。つまり数値がマイナス方向にいくと車体の外側に、プラス方向にいくと車体の内側に数値の分移動するということ。

画像では左側がインセット数値が大きく、右側が数値が小さい状態だ。ワイドフェンダーを装着した場合などは、インセット数値がマイナスになるような過激なホイールも履くことができる。

7. ユーザーを守るためのストリートホイールの安全管理

JAWA(軽合金アルミホイール協会)の存在意義

元々はレース用の軽量高性能パーツとして認知度を高め人気を呼んだアルミホイール。まだ技術的に不安定だった時代には、安全性に欠ける要素や、品質の不安定があった。そんな中状況を改善し、合法かつ安心して公道で使用できるアイテムとすべく、1972年に設立されたのが『軽合金アルミホイール協会』のJAWAだ。

JAWAでは、会員が生産・販売するホイールが国土交通省が定める保安基準に適合することを証明すべく技術基準とテスト項目を設置。さらに第三者機関『自動車用軽合金ホイール試験協議会(JWTC)』が行うVIA登録制度を推進し、アルミホイールの品質と信頼性の向上を推し進めてきた。

ここで安全基準の証といえる3種類のマークについて解説する。まず「JWL」マークは、国土交通省が定める技術基準に対して、“ホイール製造業者が自社で”試験しクリアしたことを示すもの(トラック及びバス用アルミホイールはJWL-T)。この刻印がないホイールは保安基準不適合であり、装着した状態で車検を取得することはできない。

一方「VIA」マークは、国土交通省が定める技術基準に対して、ホイール製造業者ではなく自動車用軽合金ホイール試験協議会(JWTC)が試験を行ない、クリアしたことを示すもの。

3つ目の安全指標として掲げられている「JAWA品質認定証」は、JWL(JWL-T)とVIA両基準への適合証明に加えて、PL保険(生産物賠償責任保険)へ加入済みであることを示すもの。

なお、これまでは認定証のデカールをリム内側に貼り付けていたが、経年により判読不能となってしまうことが多かった。そこで3年ほど前からデカールに代わってJAWAロゴの打刻が会員メーカーに対して推奨されている。

JAWAの努力によって、現在では国内で生産されるホイールの技術レベルや安全性は非常に高まったが、近年は海外生産ホイールによるトラブルが増えつつある。粗悪な原材料を用いたものや、鍛造で作られた細身のスポークを鋳造でコピーしたものが走行中に破損してしまう事例が多数報告されており、この保安基準を満たしていないホイールが日本国内にも安易に持ち込まれ販売されているのが現状だ。

これらの粗悪ホイールの中には、JWLやVIA刻印までコピーしている悪質な製品も存在する。そのため、購入の際は信頼できるメーカーのものを正規店で買うのがおすすめだ。

ホイールのトラブルは、命の危険に直結する。デザインや価格のみ選ぶのではなく、安全にも配慮されたホイールを選び、タイヤと共に定期的なメンテナンスを欠かさないでいただきたい。

8. オンラインオートサロン厳選【ホイールおすすめ動画】

wedschannel -ウェッズチャンネル-

おすすめ動画タイトル:ホイールメーカーが教える「初めての失敗しないホイールの選び方」

ホイールメーカーのウェッズが、初めてクルマのホイールを変えて見ようという人のために作成した解説動画。TGR TEAM WedsSport BANDOH 坂東正敬 監督とMC勝又智也さんの掛け合いが軽快で、「インチアップ」「リム幅」「インセット」など業界用語の説明、単位、製造方法などについて、素人視点から突っ込んでいるのでとてもわかりやい。また、わからないことは、天の声として登場する商品企画部の中村さんの補足説明が入るので初心者に対しても優しく、さすがホイールメーカーが作り込んだ内容と思える仕上がりになっている。

おすすめ動画タイトル:ホイールメーカーが教える「初めての失敗しないホイールの選び方」vol.3[ホイール実践編]

上記で紹介したウェッズチャンネルの初めての 『失敗しない ホイールの選び方』シリーズの第3弾。ウェッズの代表的なホイールを紹介しながら、2ピース、3ピースホイールを大解剖。坂東監督とMC勝又さんの軽快トークは健在です。

KUHL Racing TV

おすすめ動画タイトル:【カスタム雑学】ホイールの選び方。タイプによってメリットが異なります。

20数種類のホイールを展開するKUHL Racingが、「同じブランドでも種類が多くて何を選んでいいかわからない」という人のために向けた動画。自社ブランドVERZ(ヴェルズ)ホイールシリーズをベースに、なぜラインアップが豊富なのか、それぞれ何が違うのか、メリット・デメリットを、KUHL Racingの片岡社長がていねいにわかりやすく解説している。とくに、秀逸なのは、デザインと製造方法の関係性について。流行りのコンケイブなど実現したいデザインにするために、製造と構造方法を選択したといった理由が細かく解説しているのがポイントで、思わずVERZホイールが欲しくなるような内容となっている。

おすすめ動画タイトル:【カスタム講座】2ピースホイールの仕組みを解説します

ディスクとリム、カラー多数、インセットはミリ単位で設定可能と、いろんな組み合わせができるのが特徴の2ピースホイール。それゆえいろんな車種に対応できるホイールとして、カスタムカー向きと言えるわけだが、その2ピースホイールの仕組みを詳しく解説。2ピースホイールを部品を見せながら掘り下げている企画はないのでは!?

WEB OPTION CHANNEL

おすすめ動画タイトル:【TE37 Day】チューナー・関係者が語るRAYS・ボルクレーシングTE37を選ぶ理由【VOLK RACING】

Youtubeでホイールの動画を検索すると、ほぼ確実に出てくるのが、カスタムのド定番、レイズの「TE37」ホイールを紹介するこの動画。ホイールを取り扱うさまざまなカテゴリのプロや関係者達が、TE37の良さについて語りつくしており、TE37を検討してる人が見たら、購入への後押しになりそうです。