ドイツの北西部のニュルブルクリンクを舞台に開催される「ニュルブルクリンク24時間レース」。スバルとSTI(スバルテクニカインターナショナル)にとって、この伝統の耐久レースは特別なものだ。長きにわたって参戦を続け、WRX STIは2011年、2012年、2015年、2016年、2018年、2019年に、SP3Tクラス(2リットル以下のターボ車)でクラス優勝している。3年ぶりの参戦となった2022年はマシントラブルによりリタイヤとなったが、2023年は満を持してニューマシンを投入し、新たなチャレンジをスタートさせることになった。

NBRチャレンジとラリーチャレンジのマシンは新型WRX S4がベース

東京オートサロンのスバルブースに展示された、シェイクダウンを済ませたばかりの参戦マシン「SUBARU WRX NBR CHALLENGE 2023」は、現行のWRX S4(VBH型)をベースとしている。エンジンも市販車に搭載されている2.4リッター水平対向4気筒シングルターボのFA24をスープアップしたもので、6速シーケンシャルミッションを組み合わせ、駆動方式はAWDという成り立ちだ。

気になるのはやはりエンジンだろう。長い間スバルのモータースポーツ活動を支えてきたEJ20型から、FA24型への世代交代は、どのような変化をもたらすか興味深いが、400ccの排気量アップがより太いトルクを生み出し、さらに直噴化によって燃焼効率が上がり出力アップを叶えられるという。現状では最高出力380PSを達成しており、EJ20型に代わる高性能なモータースポーツ用エンジンに仕上がった。

一方、プラットフォームも市販車の「SPG(スバルグローバルプラットフォーム)」をベースにしており、もともとの剛性感も飛躍的に高まっているが、さらにサイドシルを二重構造にするなど改良の手が加えられ縦剛性をアップしているという。

そして、勝つためのマシン特有のオーラにあふれた外観もじつに魅力的だ。マットなブルーをベースにピンクをあしらったSTIを象徴するカラーリングをまとい、WRX S4のシャープなボディラインを活かしながら、レーシングカーに不可欠な空力デバイスやダクト類を追加。とくに大きく張り出したフロント、リアのタイヤハウス内はエアの抜けをスムーズにして、フロア下回りは作業性を考慮しつつフラットボトム化している。

ボンネットの大型エアアウトレット、リアのGTウイング、そしてBBSホイールとファルケンのスリックタイヤといったレーシングマシンならではのエキップメントも精悍さを強調しており、見ているだけでその活躍に対する期待が高まる。すべてが刷新されたNBRマシンは今後もテストを重ねブラッシュアップされ、5月18日〜21日に行われるニュルブルクリンク24時間レースに挑むことになる。

そしてもう一台、WRX S4ベースのモータースポーツ参戦用マシンがスバルブースを飾った。それが「SUBARU WRX RALLY CHALLENGE 2023」で、全日本ラリー選手権の2023年シーズンに投入が予定されているマシンのコンセプトモデルである。

スバルとしては、昨年までVAB型 WRX STIで新井敏弘選手と鎌田卓麻選手がエントリーしていたが、WRX S4ベースにニューマシンを投入し、2023年も引き続きシリーズの最高峰カテゴリーであるJN1クラスに参戦予定の新井、鎌田両選手のチームをサポートする。マシンは開発中ということもあり開幕戦には間に合わないが、シーズン途中から投入される見込みだ。