2012年にスタートし、今回で11回目(※2014年、2020年、2021年は開催なし)を迎えた『バンコクオートサロン2025』。
D1GPの併催をはじめ、スーパーカーレース、アウトドア、eモータースポーツなど、これまで多彩なコンテンツを取り入れてきたが、2025年の大きなトピックスは『BIG MOTOR SALE(ビッグモーターセール)』との併催だろう。

ビッグモーターセールは、タイにおいて『MOTOR SHOW』『MOTOR EXPO』に次ぐ大規模イベントで、自動車販売を主眼にした催しとしては国内最大級。日系メーカーはもちろん、メルセデス、BMW、ポルシェ、フォード、ロータス、MG、ボルボといった欧米ブランドが並び、さらにBYD、GEELY、ZEEKR、XPENGといった中国勢も多数参戦。日本ではまだ珍しいEVの存在感が際立っていた。

主催者によれば、タイのマイカー購入事情は「就職数年後に1台目を購入 → 20代のうちにアップグレード → 家族ができたらファミリーカーに → 子育てが落ち着けば再び自分好みの愛車へ」というライフサイクルが一般的とのこと。来場者層も30〜70代と幅広い。

一方、バンコクオートサロンは10〜20代の若い世代が中心で「新車を購入したら、ホイールやタイヤなどを自分好みに変えたいという方も多いので、ビッグモーターセールでクルマを買って、バンコクオートサロンで気になるアイテムをチェックするといった相乗効果が生まれることを期待しています」と語ってくれた。

実際、どちらのイベントも区切りなく往来することが可能となっていて、来場者は2つのイベントを楽しむことができるようになっていた。

今回の併催により、オートサロン側の自動車メーカーはホンダ、いすゞ、トヨタ、マツダ、そして中国のOMODAが出展。日産と三菱はビッグモーターセール側にブースを構えていた。また、マツダを除くメーカーは、オートサロン側ではGRや無限&Moduloなどカスタマイズモデルを展示し、ビッグモーターセール側では新車を披露するなど、明確な棲み分けを実施。

日本からはマレーシアに続きトミカがブース出展し『頭文字D 30th Anniversary』アイテムを中心に注目を集めていた。さらにスプーン(OAK CLUB)、ヴェイルサイド、GReddy、小倉クラッチ、CUSCO、FUJITSUBO、ウィンマックス、EXEDY、VERTEX&MAXPROなどのブランドもブースを構え、東京オートサロン創設者・稲田大二郎氏をはじめ、スプーン市嶋 樹氏、ヴェイルサイド横幕宏尚氏、T&E上野高広選手、RE雨宮 雨宮 剣氏がサイン会やトークショーに登場。トップシークレット永田和彦氏もファンからのサイン攻めに終始囲まれていた。

展示車両も一昔前の“タイスタイル”は影を潜め、日本のイベントに並ぶクオリティ。完成度の高いGT-RやRX-7に加え、EVカスタマイズも見どころのひとつとなっていた。

屋外では日替わりミーティングを開催! ステージや走行エリアも

屋外ではホール近くの2面の駐車場を利用し、日替わりのカーミーティングを展開。片側は走行エリアとしてジムカーナタイムアタックやドリフトデモラン&同乗走行を実施。もう一方にはステージを設け、水着洗車ショーやDJタイム、さらにピックアップ車両を横付けしてインタビューを行う「カーパレード」など、多彩なプログラムが繰り広げられた。

カークラブミーティングには5日間で計18クラブ、約600台が集結。ピックアップトラックのカスタムは走り系から魅せる系まで多彩で、シビック、シルビア、RX-7といった日本車も数多く集まり、会場を彩った。日本から持ち込んだ雑誌などを販売していた三栄ブースによれば、屋外ミーティングに登場する車種関連グッズの動きが特に良かったという。

タイのクルマ事情とこれからのカスタム需要

かつては街中にオンボロ車が目立ったタイだが、近年はそうした姿も減り、EVを含む新型車の普及が顕著。経済発展により新車購入層が確実に増えており、今後はカスタム需要の拡大も期待される。実際にサスペンションやブレーキ関連のパーツはすでに需要があるとの声も聞かれた。初日に行われたOMODAのワンメイクミーティングからも、EVカスタムの広がりが伺える。
一方で、日本のネオクラシック人気も根強く、大切に維持された車両だけでなく「このイベントに合わせて完成させました」というフレッシュな車両も見られたのが印象的だった。

今年は会場都合でオートサロン側のスペースが縮小し、小規模カスタムショップや展示車両の数は例年より少なめだった。それでもコアファンはもちろん、ファミリー層を中心に新たな来場者層の姿も目立ち、特に週末は例年以上の盛り上がりを見せた。
バンコクオートサロン主催者は「来年以降はホール数を増やし、規模をさらに拡大。屋外走行イベントも進化させていきたい」と展望を語り、バンコクオートサロンのさらなる飛躍を予感させた。