1月12日(金)に千葉県の幕張メッセで開幕した『東京オートサロン2024』。2日目の土曜日を迎えた会場には、多くの観客が詰めかけるなか、各ブースでトークショーなどステージイベントも数多く行われた。

 とりわけ西ホール1に位置する横浜ゴムのブースでは、『ヨコハマ トークラッシュ』と題し、一日を通してトークショーが行われ、多くの人を集めている。ここでは、13日に9つ行われたステージのうち、多くのモータースポーツファンを集めた3つのトークショーの様子をお伝えしたい。今回は、ヨコハマがサステナブル素材を配合した次世代タイヤを供給している全日本スーパーフォーミュラ選手権がフィーチャーされている。

 まずは14時から行われた『TEAM MUGEN SUPER FORMULA 2024に向けて』。今季の全日本スーパーフォーミュラ選手権にTEAM MUGENから参戦する野尻智紀と岩佐歩夢が登壇した。

 2021、2022年と連続王座を獲得した野尻は34歳、一方2023年までFIA F2に参戦してきた岩佐は22歳と、いわゆる“ひと回り差”。だが、MCを務めたお馴染みピエール北川さんから「ピッチピチやなぁ」と向けられると、岩佐は意外や戸惑った表情を見せた。

「海外に行くと、そういう感覚がないんですよ」と岩佐。ヨーロッパで“F1直下”に位置するF2では、20代前半のドライバーはもはや“若手”ではない、ということである。

 そしてトークのテーマは『F1とスーパーフォーミュラ』に。岩佐は11月末のアブダビテストで、そして野尻はその数日後のホンダレーシングサンクスデーで、ともにF1マシンをドライブしている。

 F1マシンについて、はじめは「(スーパーフォーミュラと)変わんないっす。タイヤ4つついてれば、一緒だって」と嘘ぶく野尻だったが、すぐに「ヤバいっすよ。緊張でしかない。すーごい緊張しました」と本心を明かした。

「乗りやすいか、乗りやすくないかで言ったら、乗りやすかったですね。なんか、快適でした。『コンフォートモード』みたいな感じで、ストレートも安定して走れたし」という野尻の発言には、岩佐も「正直、運転するということに関しては、F2やスーパーフォーミュラより簡単でした」と同調した。

 ただ、岩佐は「逆にみんながそこそこいいタイムで走れてしまうので、そこから先、トップを取るためどこまでどこを攻めるか、というのが難しさだと思います」と冷静な分析も披露していた。

 3度目のタイトルを目指すベテランと、勢いに乗る若手という注目の組み合わせとなる今季のTEAM MUGEN。岩佐は「しっかりと1年経験を積んで、卒業して、F1に行く」というビジョンも力強く口にしていたのが印象的だった。

 2024年のスーパーフォーミュラで間違いなく上位争いを繰り広げるであろうふたりの軽妙なトークに、気がつけばブースいっぱいの観客が詰めかけていた。

野尻智紀と岩佐歩夢

福住仁嶺は“開幕勝利”を宣言?

 そしてスーパーフォーミュラ関連ではもうひとつ、16時から行われた『Kids com Team KCMG SUPER FORMULA 2024に向けて』の様子を紹介したい。ステージには松田次生監督と、今季ホンダ陣営よりメーカーを移籍して加入する福住仁嶺が登場した。

 福住はトヨタGAZOO Racingからの体制発表前週、2023年12月に鈴鹿サーキットで行われた合同/ルーキーテストの2日目に、KCMGのマシンを初ドライブしている。

 その際のチームの印象について問われた福住は、「どんな印象とかっていうのも分からないくらい、集中しちゃってましたね」と振り返る。

 このテストでは、1日目にドライブした関口雄飛とシートを懸けて争う実質的な『オーディション』の雰囲気が漂っていたが、「1日で結果を残さないとダメなんじゃないか、という雰囲気でした。気合いが入りすぎてしまっていて、(走行前日の)搬入日も作業が全然終わっていない12時くらいにサーキットに着いてしまって、初めてのチームなので居場所も分からず『すみません……』みたいな感じでした」と福住。

 そんな初テストで、緊張をほぐしてくれたのが次生監督だったという。「コミュニケーションを取って緊迫感をなるべくなくす、というのもすごく大事なのでね」と話す次生監督は、「やっぱり速いよね」と福住に期待を寄せた。

 ドライバー出身……いや、むしろスーパーGTでは現役選手である次生監督の存在は、福住にとっても「めちゃくちゃ心強い」という。

 12月のテストを好タイムで終え、雰囲気も良いというKCMG。開催カレンダーを見つつ、MCから「いつくらいに優勝しましょうか」と振られた福住は、「流れで言えば、一番はじめ(開幕戦)だと思います」と口にすると、好成績を期待する会場のファンも沸いた。

「(自分は)現実的なことを言うドライバーなんですよ。でも、今年は強気でいきたいと思います」

松田次生監督と福住仁嶺

アップガレージ石田監督を“沼らせた”坂東正敬監督

 このふたつのトークショーの間には、ふたりのスーパーGT監督が出演したステージも人気を博した。前日にオートサロンの会場で2024年の体制を発表したTEAM UPGARAGEの石田誠監督と、TGR TEAM WedsSport BANDOHの坂東正敬監督だ。

 ステージには、両チームが2023年のレースで勝利した際に獲得したトロフィー計3つが並べられていたが、坂東監督は「(鈴鹿で)2位から1位に繰り上がったじゃないですか。そのあとヨコハマタイヤに貸していたので、このトロフィー見るのほぼ初めてなんですよ」ということで、急遽『模擬表彰式』よろしく、ステージ上でトロフィーを掲げる一幕も。

 なお、スーパーGTの表彰式のプロトコルでは、通常チーム監督が表彰台に登ることはないが、坂東監督いわく「僕のチームが本気で勝ったら、僕は上がりますよ。GTAの社長(坂東正明氏。正敬監督の父)に言って」だそう。

石田誠監督と坂東正敬監督

 このようにファン期待の“マサ節”も随所に聞けたステージだったが、醍醐味はそれだけではなかった。

 もともとは『TEAM UPGARAGE with BANDOH』という形で坂東監督とともにスーパーGTのプロジェクトをスタートさせた石田監督。坂東監督は石田監督に「一度勝って、あの感動を味わったら辞められませんよ。それまでやりましょう」と囁いていたという。

 石田監督は、「そう、完全に“沼”らせたんですよ」と坂東監督を指差す。

「マサさんのおかげでね、僕の生涯を捧げる仕事になりつつあります」と語る石田監督は、株式会社アップガレージグループの代表取締役会長CEOを務めている。“ビジネスパーソン”である石田氏は、スーパーGTの監督業の真髄について次のように語った。

「あんなに真剣になって緊張することは、仕事(本業)でもないですから、きっと。そして何をやってもうまくいかない。ビジネスでも、定石というものがあるじゃないですか。そういうのがまったく通用しない。だから本当にやめてしまいたいと思ったこともあったけど、そんな時にポッと神様がプレゼントのように勝利をくれたりする。そういう『思いどおりにならない』という部分に僕はハマっていますし、これからも抜け出せないでしょうね」

 坂東監督もいつもながらモータースポーツファン拡大への思いを口にするなど、笑いとともにふたりの監督の“熱”も溢れるトークショーとなった。

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 この『ヨコハマ トークラッシュ』は最終日となる1月14日(日)にもオープニング含め10のステージが予定されている。引き続き、スーパーフォーミュラ、スーパーGTなどに出場するドライバーが出演するなか、今年メーカー間移籍で話題を呼んだ大湯都史樹は『大湯選手をフカボリ』という単独ステージも設けられている。幕張メッセに来場の際は、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

『ヨコハマ トークラッシュ』1月14日(日)のスケジュール

ヨコハマブースにおける出展内容や車両の詳細、トークショーの詳しいスケジュールなどは、『YOKOHAMA 東京オートサロン特設サイト』(https://www.y-yokohama.com/product/tire/tas2024/)で確認してほしい。

2024年2月から順次発売される横浜ゴムのプレミアムコンフォートタイヤ『ADVAN dB V553 (アドバン・デシベル・ブイゴーゴーサン)』
東京オートサロン2024 横浜ゴムブースの様子
東京オートサロン2024 横浜ゴムブースの様子
東京オートサロン2024 横浜ゴムブースの様子
東京オートサロン2024 横浜ゴムブースの様子

元記事

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