中国のEVメーカーBYDが、いよいよ日本市場に参入する。昨年7月に日本法人のBYD Auto JAPANを設立し、3モデルのBEV(電気自動車)を導入することを発表。BYDの電気自動車としては、公共交通用のバスなどがすでに日本でも使用されているが、乗用モデルの販売が正式にアナウンスされたのは初めてのこと。まずはミドルサイズe-SUVの「ATTO 3(アットスリー)」を2023年1月31日に発売し、続いて下半期にはe-Compact「DOLPHIN(ドルフィン)」と、ハイエンドe-Sedan「SEAL(シール)」の発売を予定している。

EV先進国ともいえる中国メーカーの本格参入は“黒船”にも例えられるが、興味を持たれている方は多いようで、この3モデルが展示された東京オートサロンのBYDブースは大盛況。なかでも発売を間近に控えた「ATTO 3」は、運転席に乗り込んだり、ボンネットを開け細部まで確認するクルマ好きが後を絶たない。

ボディサイズは全長、全幅、全高が、4455×1875×1615mm、ホイールベースは2720mmで、幅は広いものの日本でも使い勝手が良さそう。最新のトレンドを盛り込んだSUVらしさ全開のデザインは、じつにスタイリッシュ。精悍さを感じるフロントフェイスや、ダイナミックでシャープなウエストラインなど、プレミアムな印象も感じるエクステリアに仕上がっている。

「ATTO 3」は、BYDが独自に開発した最新型のリン酸鉄リチウムイオン電池を用いる「ブレードバッテリー」を搭載したEV専用のプラットフォーム「e-Platform 3.0」を採用し、58.56kWhのバッテリーと150kW/310Nmのモーターを搭載し、485km(WLTC値、メーカー調べ)の航続距離を実現している。

また、電池が床面にレイアウトされているが、フロア高が抑えられているので乗降性は良好で、車内空間にはゆとりがある。大開口のパンラマサンルーフが標準となるほか、ボタンひとつで縦型・横型と用途によって使い分けられる12.8インチタッチスクリーンやワイヤレス充電といった先進装備も採用している。

さらに予測緊急ブレーキシステムやBYDアラウンドビューシステム、ブラインドスポットインフォメーションなどの先進安全・運転支援機能も充実。その他にも、V2L(Vehicle to Load)とV2H(Vehicle to Home)にも対応しており、停電時の電源供給やキャンプをはじめとするアウトドアでの活用などにもスマートに対応するbevならではの能力を持っている。このような装備の充実度を考えれば、440万円(消費税込み)という価格が大きなセーリングポイントになるのは間違いない。

「ATTO 3」に続いて導入が予定されている「DOLPHIN」と「SEAL」も個性あふれるモデルで存在感を放っていたが、日本仕様の詳細はまだ発表されていない。すでにお気づきに方もいらっしゃるかもしれないが、じつは「ATTO=カワウソ」、「DOLPHIN=イルカ」、「SEAL=アザラシ」と、3台の車名は水辺に棲む動物に由来する。

「DOLPHIN」と「SEAL」については、内外のデザインについても海からのインスピレーションを得ており、中国では2021年8月に販売を開始したコンパクトEV「DOLPHIN」は、「e-Platform 3.0」を用いているのは「ATTO 3」と変わらず、日常に溶け込むサイズでさまざまなライフスタイルにマッチするに仕立てられている。

全長、全幅、全高は4290×1770×1550mmで、ホイールベースは2700mm。本国では「スタンダード」と「ハイグレード」の2種類が用意されており、後者は471km(WLTCモード)航続距離を実現。

言われてみれば顔立ちやフォルムにどことなくイルカのイメージを感じるが、エクステリア同様に曲線を多用したインテリアのデザインもイルカをモチーフにしているとのこと。それでいてデザインありきにはならず、使い勝手もよく考えられている。また「ATTO3」と同じく、大型モニターは回転させることが可能だ。

一方、「SEAL」はBYDが昨年5月に発表した4ドアサルーンで、「DOLPHIN」と同じように海からのインスピレーションを得たスポーティかつエレガントなデザインを採用。全長、全幅、全高は4800×1875×1460mm、ホイールベースは2920mmよいうボディサイズを生かした伸びやかなシルエットが印象的だ。

本国では1モーターRWDの「スタンダード」と、2モーター(160kW+230kW)のAWDの「ハイグレード」が設定されており、BYDの最新技術を投入することで、航続距離は555km(欧州WLTP値)に達するなど性能面においても先進性をアピールするモデルである。

エクステリア同様インテリアもワイド感があり、実際にゆとりのある心地よい空間が広がる。ラウンドした独特の形状のダッシュボードや上質さを感じる作り込みなどこだわりを感じる仕上がりも魅力となっている。